第5章 僕は風 君は空~沖田総司編~
その晩、一つの布団の中で寄り添って色々な話をした。
僕の過去の話…まだ日野に居た頃の試衛館の話や、有希ちゃんと出会う前の新選組の話…
有希ちゃんは楽しそうに聞いてくれた。
それから、僕がこれ迄にどれだけ有希ちゃんに救われて来たのかも伝えた。
有希ちゃんも何よりも僕が大切だと…愛していると言ってくれた。
「沖田さん…」
「何?」
「今朝、お隣の方に聞いたんです。
此処からもう少し登って行くと、
凄く立派な桜の木が一本だけあるんだそうです。
毎年それは見事な花を咲かせるんだ……って。」
「そうなんだ。」
「もうすぐ咲きますよ。」
「そうだね。」
「咲いたら…一緒に見に行きましょうね。
二人で行きましょうね。」
「うん。」
「そして…来年は三人で見ましょうね。」
来年……僕はまだ生きていられるかな?
でも有希ちゃんは僕に『だから死ぬな』と言ってくれているのだと思った。
三人で…僕と有希ちゃんと…僕と有希ちゃんの子……三人で。
「うん。三人で見ようね。」
僕がそう答えると有希ちゃんはとても嬉しそうに笑って、僕の腕の中で直ぐに眠りに落ちた。