第5章 僕は風　君は空～沖田総司編～

「………どうして？」

「……………………。」

問い掛けても有希ちゃんは無言のままだ。

「もう……僕の事、嫌になったの？」

僕の声は震えていた。

有希ちゃんはゆっくりと首を横に振ると、とても小さな声で告げた。


「お腹に………」


「………え？」

お腹を庇うように腕を回して、頬を紅く染めている有希ちゃんの姿に僕の心臓がどくりと高鳴る。

「もしかして………」

「はい。………多分。」

有希ちゃんはこくりと頷く。

「ああ………」

僕は大きく息を吐いてから、直ぐに膝を付いて有希ちゃんの身体を抱き寄せた。

「有希ちゃん……ありがとう。」

「……喜んでくれるんですか？」

不安そうな声で問う有希ちゃんの顔を両手で包んでその目を見つめる。

「当たり前じゃない。凄く嬉しいよ。」

「沖田さん……」

安心したように笑った有希ちゃんが僕の手に頬を擦り寄せた。


有希ちゃんの中に僕の子が宿っている。

有希ちゃんがその子を守ろうとしてくれた。

もう何もかもが嬉しくて、幸せで……。

ついさっきまで土方さんに自分勝手な嫉妬をして、見苦しく不貞腐れていた自分が浄化されて行くような気がした。

どうして有希ちゃんは何時も、こんな僕を幸せにしてくれるんだろう。

「ああ……どうしよう。嬉しくて仕方が無いよ。」

「私も凄く嬉しいです。」

にっこりと笑う有希ちゃんが堪らなく愛おしい。