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薄桜鬼~いと小さき君の為に~

第5章 僕は風 君は空~沖田総司編~


ある日、僕の所に近藤さんと土方さんが見舞いに来てくれた。

久し振りに二人に会った有希ちゃんも何だか嬉しそうだ。

「随分と顔色も良くなったじゃないか、総司。」

近藤さんが相変わらずの穏やかな笑顔を浮かべて僕を見つめる。

「もう何時だって戻れますよ……僕は。」

強がって言ってはみたけど

「いやいや、無理は禁物だ。
 今、無茶をして後々取り返しの付かない事になっても困るからな。」

やんわりとたしなめられてしまった。

その隣で土方さんは無言のまま、僕を値踏みするような視線を向けて座っている。

僕がまだ使える人間かどうか推し測っているみたいだ。

その視線に僕はとても居心地の悪さを感じた。


その後は新選組の近況を聞かされたり、下らない世間話をしたりして近藤さんと土方さんは帰って行った。

帰り際に近藤さんは

「一番組の組長は総司しか居ないんだ。
 待っているからな。」

と、僕の頭をくしゃりと撫でてくれた。


「お二人共、沖田さんの事を本当に心配されてるんですね。」

近藤さんと土方さんを見送りに出ていた有希ちゃんが、そう言いながら戻って来た。

「有希ちゃんにはそう見えた?」

僕の問いに有希ちゃんが小さく首を傾げる。

僕は近藤さんの隣にぴったりと寄り添う土方さんの姿が頭から離れない。

あの場所は子供の頃から僕だけのものだったのに……。

近藤さんの為なら命なんて惜しくないと必死で戦って来たのに……。

土方さんが僕から大切な居場所を奪って行ってしまうような気がする。
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