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薄桜鬼~いと小さき君の為に~

第5章 僕は風 君は空~沖田総司編~


「何処にも行きませんよ。」

「………え?」

「私は何処にも行きませんよ。
 ずっと沖田さんの側に居ますから…。」

「……僕を…許してくれるの?」

「だって、私は沖田さんのものですから。
 全部…沖田さんの好きにして良いんですよ。」

そんな訳が無い。

僕の好きにして良い訳が無い。

そんな事分かり切っているのに、僕自身が消化出来ないぐちゃぐちゃとした醜い感情を全て受け入れてくれる有希ちゃんが堪らなく愛おしい。

有希ちゃんの小さな身体を折れそうな程力一杯抱き締める。

「あんな事、もう絶対にしない。
 あんな事……もう絶対に言わないから……
 お願い……何処にも行かないで。」

「はい。」

頷いてくれた有希ちゃんの額に、僕はそっと口付けた。



それからの僕は、有希ちゃんを無闇に求める事を止めた。

勿論、何時だって有希ちゃんに触れていたかったけど、触れられないより失ってしまう方が何倍も怖いって事に気付いたんだ。

夜も一つの布団で眠るけど、抱き抱えるだけで我慢した。

僕が腕枕をしてそっと抱いてあげると、有希ちゃんはいつも直ぐに眠ってしまう。

疲れているんだなって思うと僕の我慢なんて大した事じゃないって耐えられた。
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