第5章 僕は風 君は空~沖田総司編~
その日の昼過ぎからうとうとしてしまった僕が目を覚ますと、部屋の中にはもう西日が差し込んでいた。
物音一つしない静寂に気付いて、僕は急激に不安に襲われる。
「……有希ちゃん?」
名前を呼んでみても返事は無い。
「有希ちゃん……有希ちゃんっ……」
探す程の広さも無い庵の中を僕は必死で歩き回った。
その時、玄関の引戸が開く音がして野菜を抱えた有希ちゃんが入って来た。
「沖田さん、目が覚めましたか?」
「……何処行ってたの?」
「隣家の方が畑の野菜を分けて下さるって言われたので
戴いて来たんですよ。」
「一人にしないでよ……」
「え……?」
「一人にしないでよ。
何処にも行かないって言ったじゃないかっ!」
握った拳を震わせて叫ぶ僕の姿に、有希ちゃんが困惑したような顔をする。
「ごめんなさい。沖田さん、眠ってたから…。
それにお隣に行っていただけですし……」
申し訳無さそうに俯く有希ちゃんを僕は無言で睨み付けた。
有希ちゃんの言っている事は至極全うだ。
なのにどうして僕はこんなに有希ちゃんを責めてしまうのか……
自分でも分からない。
分からないのに、ほんの僅かな時間だけでも一人きりにされた寂しさに耐えられなかった。
「お腹空きましたか?
直ぐに夕餉の仕度しますね。」
そう言って勝手場に向かう有希ちゃんを背後から引き寄せて抱え込んだ。
有希ちゃんが手に持っていた野菜が大きな音を立てて床に転がる。
「君が……いけないんだからね。」
そのまま有希ちゃんを壁際まで追い込んで、その両手を板壁に縫い付けると
「……沖田…さん?」
有希ちゃんは怯えたように潤んだ目をして振り返った。
その表情に僕自身が一気に熱り立つ。
「君がいけないんだ。」
耳元でもう一度同じ言葉を囁いてから、有希ちゃんの着物の裾を思い切り腰まで捲り上げた。