第5章 僕は風 君は空~沖田総司編~
僕は今、有希ちゃんと二人で暮らしている。
労咳が悪化して録に刀を握れなくなった僕の療養の為にと近藤さんがこの庵を用意してくれた。
勿論、最期の時まで近藤さんの側で戦い続けたかった僕はその話を簡単には受け入れられなかったけれど、でも以前のように刀を振るえない事に自分自身が一番落胆していたし、近藤さんは待っているからと言ってくれた。
それに有希ちゃんが僕と一緒に来るって言ってくれたから、僕は屯所を離れる決心をしたんだ。
市中から少し離れたこの山里の庵に移ってからは咳き込む事もかなり少なくなった。
ここ最近は喀血も無い。
松本先生の進言通り、空気の綺麗な場所である事も理由なんだろうけど、何よりも甲斐甲斐しく僕の世話をしてくれる有希ちゃんの存在がとても大きいと思う。
大好きな有希ちゃんと二人で過ごす毎日は、ささくれ立っていた僕の心を穏やかに均していった。
もう僕は有希ちゃんが居ないと生きて行けないと思うまでになった。
そんな有希ちゃんを大切にしたいと思っているのに、僕は皆のように戦えない自分の不甲斐無さに気付く度激しい焦燥感に煽られて、それを誤魔化す為に毎晩有希ちゃんを求めてしまうんだ。
いや、夜だけじゃない。
昼も……朝の時だってある。
僕の為に炊事も洗濯も、全ての家事を熟して一日中働いている有希ちゃんにこれ以上負担を掛けるのは良くない事だって分かってる。
自分勝手で下卑た欲望を有希ちゃんにぶつけ続ける自分を、吐き気を催す程嫌悪する時もある。
それでも…有希ちゃんに触れていないと不安で堪らないんだ。
一寸でも有希ちゃんの姿が見えないと、僕は捨てられたんじゃないかと身体が震える。
結局はその度に有希ちゃんを求めて……の繰り返しだ。
だけど有希ちゃんは嫌な顔一つせずに僕を受け入れてくれる。
今夜だってそうだ。
しつこい程に有希ちゃんを啼かせて、何度も絶頂させた。
気を失ってしまうまで責められた有希ちゃんの身体は限界を越えたんだろう。
でもきっとまた明日も笑顔で僕の為に働いてくれるんだろうな。
そして僕は……また有希ちゃんに甘えるんだ。
僕は……まだ生きててもいいのかな?