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砂時計【菅原孝支】

第2章 それは「昔」の「過ち」と「傷」が作り上げたモノ





彼女とまともに話したのは、中学生活に慣れてきた5月ごろ。
まわりは、仲良くなった友人とつるんでは笑っている。
そんな中だけは一人本を読んで座っていた。

いつもいつも一人だった。

話しかけてくれる友人がいないわけではない。
でも気がつけば彼女は一人だった。

かわいそう。

そんなことを考えていたわけじゃないけど、彼女を見てると胸がキュッと締まった。

「なに読んでるんだ?」

だから話しかけて見た。

本から目を離し彼女は俺を見る。
そしてまた本に目を戻して簡潔に言った。

「なんかよくわかんない」
「は?」

思っても見なかった回答に拍子抜けしてしまった。
よくわかんないってなんだ?

「内容が難しくて頭に入ってこないの」

付け足すように彼女は言う。
あぁ、そういうことか。
軽くため息を吐いては本を閉じた。

「私、本読むの苦手みたい」
「そうなのか?でもいつも読んでるじゃないか」
「知的って思われたくて読んでるだけなの、実は。見栄張っちゃった」

そう言って彼女はどこか恥ずかしそうにはにかんだ。
そして「でも猫かぶるの疲れたからもうやめる」と言って、
持っていた本をカバンの中にしまった。

俺はこの時、少しだけ彼女のことが気になり出した。
少しだけ周りの人とは違っていたから、興味が出ただけ。

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