第2章 それは「昔」の「過ち」と「傷」が作り上げたモノ
が猫をかぶるのをやめてから、
彼女のまわりにも友人が増えて行った。
「最初とっつきにくい子だと思ってた!」
「あんまり近寄りたくなかったよねー」
「でも、今はそんなことないよ」
そんな会話が聞こえた。
は笑ってその会話の中に溶け込んでいて、
どこかホッとした。
あの時のひとりぼっちの姿はどこにもない。
そんな中学1年5月を満喫していた。
そこからは何もなく、淡々と時間が過ぎて行く。
バレー部に所属していた俺は、毎日の練習と公式試合に没頭した。
公式試合と言ってもレギュラーじゃない。
控え選手だ。
先輩たちの戦う姿を見て早くコートに立ちたいと思っていた。
中総体で、2回戦敗退をしてしまい3年の先輩たちは引退した。
6月の出来事だ。
毎日の練習と練習試合。
めまぐるしく時間が過ぎて行く。
そんな中学1年10月に、小さな事件が起きた。
中学1年、10月。
俺、菅原孝支は初めて恋をした。
同じクラスの女の子。
名前は氷川春香。
きっかけは、なんだったろう。
よく覚えていない。
でも、氷川のことを好きになった。
「菅原くんって春香ちゃんのこと好きなんだ」
ある日の昼休み、隣の席のが小声で言ってきた。
牛乳が喉につまりむせる。
「げほっごほっ!な、なんで……」
「顔見ればわかるよ。分かり易いね、菅原くんは」
口から垂れる牛乳を吹き、俺は深く息を吐いた。
そんなに顔に出ていたのか俺は。
確かに気がつけば目で追ってはいたけど、そんなにひどかったのか。
「なあ、」
「なあに菅原くん」
「氷川と友達だよな、お前」
「うん、そうだよ」
「その、さ……。協力、してくれないかな?」
「…………………」
この時俺は、彼女にそう言った。
彼女に俺の恋心がばれて隠す必要もなかったし、何より俺は氷川のことを手に入れたかった。
だから友人である彼女に協力を求めた。
彼女は一瞬、唇を噛み締めたような気がした。
気がしただけで実際は噛み締めてなかったかもしれない。
「いいよ。協力してあげる」
今思えば、この時点で俺はのことを傷つけていた。
ように思う。