第1章 それは「運命」で「偶然」で「必然」の出来事
それは、運命で偶然で必然だったのかもしれない。
地元の大学を卒業して、高校教師として3度目の春を迎えた。
仕事帰りに居酒屋で一人寂しく酒を飲んでいた俺は、
店に入ってきてた人の姿を見て、小さな声を上げた。
俺の声はその人に届いていたらしく、そのヒトもまた俺の姿を見ると目を大きく見開いた。
「もしかして菅原くん?」
「久しぶりだな、」
俺の隣に腰を下ろし、彼女は生ビールを頼む。
しばらくお互いに言葉を交わさずにちびちびとグラスを傾ける。
沈黙を破ったのは、だった。
「こうして顔合わせて会うの何年ぶりだっけ?」
「中学以来だから10年ぐらいになるんじゃないか」
「うわー、そんなに会っていないんだね」
彼女はジョッキを大きく傾けた。
同じ中学出身の。
だけど、高校大学と別々の場所へ進学した俺らはそこから一度も会うことなく、それぞれの道へ進んだ。
は、神奈川の大学に通い看護師としての資格を取り、宮城に戻ってきたらしい。
中学時代のしか俺は知らないため、中学と今を比べると
当たり前ではあるが、今の方が大人びていて綺麗になっていた。
看護師としてのレッテルがそう見せているのだろうか。
いや、それを抜かしても彼女は本当に綺麗になった。
「菅原君は?」
「え?」
「今、何してるの?」
彼女の声で我に返る。
「俺は今、高校教師やってるよ。烏野高校」
「わかる!!ぽいよ、高校教師っぽい!!」
「ぽいって言うか、そうなんだけど……」
テンションが一気に上がる彼女を横目に、俺は苦笑した。
つまみひとつと生ビールを注文する。
彼女の顔を見ると、頬が軽く赤くなっていた。
弱い方なのだろうか。
赤く染まった頬に、とろけている瞳。
ここ2年くらい彼女がいなく、ご無沙汰だった俺は正直言うとキてしまった。
「」
「なに?」
「この後俺ん家に来て飲みなおそうぜ」
下心ありありで彼女を誘った。
はポカンとした顔をした後、「うん」と頷いた。