第2章 それは「昔」の「過ち」と「傷」が作り上げたモノ
「、あのさ」
「な、なに?」
「ごめん、八つ当たりした。お前は俺を慰めようとしてるだけなのにな」
このとき俺は何を思ったのか、
彼女の顔をまっすぐに見つめて
「なぁ、俺と付き合ってよ」
俺は彼女のことは好きではなかった。
友人としては好きだけど、恋愛関係としてはみれなかった。
それでも彼女が俺を慰めてくれてる、という優しさに甘えたかった。
「菅原くんは、私のこと好きなの?」
「…好きだよ」
こうでも言わなけれなダメな気がした。
は微笑んで、一度だけ頷く。
こうして俺は心の慰めとしてを隣に置いたのだ。
彼女は本当に優しかった。
その優しさに救われていた。
その関係は3ヶ月続いた。
だけど、キスもデートも情事もしなかった。
が求めてきても俺はそれを拒んだ。
それでも彼女は俺のことを「好きだ」と言ってくれて、
俺の気持ちは軽くなっていった。
と同時に、虚しくもなった。
だんだん彼女といることに苦痛を覚え始め俺は、
12月24日にを振った。
「ごめん……」
「なんで謝るの?謝らなくていいよ」
「でも俺はお前を……」
「あのさ、菅原くん。一つだけ聞かせて」
「なに?」
「私のことどう思ってる?」
まっすぐに俺をみつめる。
その真っ直ぐな瞳に俺は何も言えなかった。
彼女は少しだけ眉を寄せて笑って、
「今までありがとう。楽しかったよ」
そんなわけあるかよ。
デートなんて一回もしてないんだぞ。
手だって繋いでないし、会話だってほとんどが話し内容にうなづいてただけだ。
それのどこが楽しかったんだよ。
お礼を言われるような付き合いなんてしてない。
むしろ俺が礼を言うべきだ。
自分の心の傷をいやすためにお前を利用したんだから。
それから卒業するまで俺はと話すことはなかった。
彼女は俺と同じ烏野高校を第一希望にしていたが、いつの間にか青葉城西高校になっていた。
そのことが嬉しくて悲しかった。