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【SS合同企画作品】それは秋の幻だったのか

第17章 Halloween


私と話をしていたモデルたちは「何だコイツ」って顔で大輝を睨みつけ去っていく。隣でごちそうを頬張っている大輝は、ざわつく周囲を全く気にしていない。

唇には、ジュワリと心臓まで響いたキスの味がまだ残る。首筋の赤い跡を手でさすった。跡をファンデで誤魔化そうと大輝の側から離れると、手を引かれ阻まれる。
「どこ行くんだよ」
「トイレ」
「途中で男に掴まんなよ。次は助けねーからな」


鏡を見る。キレイな赤い跡に指でそっと触れる。こんなことしなくたって、私はあなただけのものなのに。
不器用で傲慢な、彼の愛のカタチ。



完璧な首筋のメイクを終え、大輝の元に戻る。彼に近づくにつれ私の鼓動は、嫌なくらい高鳴っていく。
大輝が話してるのは、背が高くスタイルの良いナース服の美女。黒い髪は肩くらい。長い睫毛が揺れている。胸は、小さいけど。ここからは大輝の背中しか見えないけど、女の人は笑ってる。
私は大輝の服の裾を軽く引いた。
「あ?おせーよソラ。たまたま赤司が京都から…
「バカ」
「は?」

私は早足で駆け出した。会場を出たら外は夜。仮装した人だらけの街はまるで異次元。後ろから足音が追いかけてくる。腕を掴まれた。大輝の方には、顔を向けない。
「誤解だろ。ありゃ男だぜ」
へ?私は振り返る。ぽかんとした私に、彼は説明がめんどくせーって顔してる。すると近づいてくるヒールの音。
「もー、急に走らないでよ」
本当だ。すごく綺麗な顔してるけど、声や体つきも、よく見ると男の人。
「げっ、来んなよ」
大輝は私の肩を抱き寄せ、帰れ帰れと手で払う。はいはーいと手を振りながら去っていくオネエさんを見送ると、大輝はため息を吐いた。
「つーかお前、焼きもちとかやくのな。しかも男にまで」
「だ!だって、わかんなかったんだもん!」
大輝はご満悦そうに笑って、私を見下ろしていた。私の顔は赤くなっていく。
「バーカ。俺はお前だけって、決まってんだろーが」

会場に戻ろうと先を歩く大輝。
その大きな背中を私は小走りで追いかけた。彼の腕を引く。振り返りざまに背伸びをした。だけど背の高い彼には、悔しいけどキスが届かない。
「バカは大輝!私も、大輝だけなのに」
「…あー。やっぱ、独り占めしてぇわ」
大輝は私の頬をそっと撫でる。
「バンパイアは、怖えんだからな」
2人は歩き出した。ハロウィンの街を、すり抜けて。
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