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【SS合同企画作品】それは秋の幻だったのか

第18章 文化祭


背が高くて、筋肉がきれいに纏う色素の濃い体。
切れ長い目に、いつも少し寄ってる眉間のシワ。
歪んだように笑う口元、青くなびく髪。
いつもつまらなそうにボールに触れるあなたは、誰を待っているの?





出会いは、昨年の文化祭だった。嫌な事があって友だちと笑っているのが辛かった。だから1人屋上に登った。フェンスに近づきグランドを見下ろす。点灯を繰り返す、イルミネーション。
「誰だ?」
屋上の1番高い所から飛んでくる声。彼は手で帰れって合図をしてる。
知ってる。バスケ部のエース、かつ問題児。青峰大輝。

不機嫌そうな顔をしてる。でも私は捉えてしまった。彼の頬に煌めく、涙の跡を。

「私も、嫌なことあったんだ」
無視してグランドを見つめていた。
ハシゴを降りる音が聞こえる。彼の足音が、近づいてくる。
「おい無視かー」
彼の手がフェンスを思い切り掴む。目の前で大きな音が鳴り、揺れる。それでも無視をした。
「チッ、ざけんな!女だからって…」
彼は私の肩を叩いて無理やり自分の方を向ける。そしてハッとする。
私の目からは、大粒の涙が溢れていた。
イルミネーションだけが平常運転。点滅を繰り返している。
涙はその光に、照らされていた。







今思えば、その出会いは運命だったのかもね。
今年もこうして同じ景色を、一緒に眺めている。









「去年の文化祭は誰かさんがビービー泣いててよぉ、イルミネーションどころじゃなかったぜ」
「大輝だって泣いてた!」
「バーカ、ソラと一緒にすんな。俺が泣くわけねぇだろーが」

それから1年後の今日。
2人の涙を照らしてくれた蛍のような電光飾は、あの時と同じように優しく光を放っている。

背中から伝わる大輝の熱い体温。低い話し声が耳元で響くだけでゾクリとする。大輝はさっきから景色なんてそっちのけで、私の頭や耳、頬を撫でたり、キスしたり。
私の体温も高ぶり、秋の夕暮れだというのに、熱い。

1つのパーカーに包まれている。まるで2人が、繋がったみたいに。
このまま時が、止まればいいのにね。


END
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