第18章 Real feelings
「…マジかよ。」
俺が逃げて遠回りしている間に全ての決着はついてしまったということか。
こんなアッサリした結末だったのか。
俺はあの擬似デートの現場を見てしまった後、すぐにニノに事情を聞かなかったことを後悔し始めた。
「でもまだ、わかりませんから。
口ではそう言っても、気持ちまですぐに変わるもんじゃないですよ。
それでも俺の方がリードしてると思いますけどね。」
「んだよ、それ。」
「でもさすがにもう、認めますよね?小雨のことを恋愛対象として好きだって。」
ニノはいつもの冗談めかした言い方を交えつつ、俺の核心に触れた。
俺の脳裏に小雨の顔が浮かぶ。
その表情は、俺の好きな笑顔だった。
小さい頃からずっと一緒で、長年見てきたその笑顔。
その笑顔が曇っていくのが怖くて、俺はブレーキを掛けていただけだった。
答えはとっくの昔に出ていたんだ。
「あぁ、そうだな。俺は小雨が好きだ。」
俺の顔を覗き込んで答えを待っていたニノは、何故か満足そうにふふっと笑った。
「それじゃあ俺から奪ってみてくださいね。」
ニノは口の片端をあげて悪戯に笑うと、「また明日」と帰って行ってしまった。
取り残された俺は拳を握って気合を入れる。
「やってやろうじゃん…!」
俺は遅い帰宅をして部屋に入り、隣のベランダを見た。
さすがにもう真夜中になっていたので電気もすっかり消えている。
俺は自分の部屋の窓ガラスに手を付き、しばらくそうして浮かんでは消えていく幼い頃からの記憶を思い返していた。