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△ Campus Life

第18章 Real feelings


あんな小雨ははじめて見た。
俺のことを見下ろす視線は真っ直ぐで切実で、俺の心を見透かしているみたいで怖かった。

俺はしばらくベンチで考え込んでいた。
隣駅のCDショップで小雨とニノを見かけてから、俺は真実を聞くのを恐れていた。
確かめたいけど聞きたくない。
そんな葛藤に苛まれ、ただズルズルと逃げ続けていた。
そうしていても何も解決しないことは分かっていたのに。



「向き合って、か…」



俺はしばらく頭を抱えてぐるぐる考えていたが、あの真っ直ぐな瞳を思い出して膝を思い切り叩いた。
そして立ち上がるとすぐ、ニノに電話を掛ける。



「あ、もしもし…俺、だけど。久しぶり。」
『はいはい、お久しぶりですね。』
「今からちょっと出れるか?あの公園にいる。」
『…分かりました。』



ニノは会ってなかった時間なんてなんでもないみたいに普通に電話に出た。
だいぶ夜も更けていたが、ニノは来てくれるらしい。
ニノの家から公園まではチャリを飛ばせばそんなに遠くない。
俺はそわそわと湖の周りを歩きながらその時を待った。



「翔さん!お待たせです。」



遠くから声がして、俺は足を止める。
湖の反対側にニノの姿が見えた。
俺は軽く手を上げるとお互いゆっくり歩み寄っていく。



「ひ、さしぶり。」



湖の柵に2人して寄りかかり、なんとなく居心地悪そうに目を合わせない。
俺はとりあえず挨拶をしてみる。



「聞いたんですね、小雨から。」



ニノが小雨のことを呼び捨てにしている。
それだけで何か燃えるものが腹からこみ上げてくるようだった。
それでも俺は冷静に話を聞くため、ため息混じりに「あぁ」とやっと答える。



「俺、何度も翔さんにあの日の説明をしようとしたんです。」
「あの日、って…?」
「日曜日。隣駅のCDショップで目合いましたよね?」



ニノと目が合った気がしていたのは気のせいじゃなかった。
ニノの言葉に冷や汗が背中を伝い、それが余計に気分を悪くした。



「あの…ですね。話すと長くなりますし、俺も謝らなくちゃいけないんです。」



そう言って、ニノは話し始めた。



「まず、あの目が合った日。俺たちはまだ付き合ってませんでした。あれは擬似デートなんです。」
「へ…?擬似?」
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