第17章 Fact
「ニノの彼女は?あー…ミスキャンパスの。」
合間に重い沈黙を挟んで、翔君が口を開いた。
それは至極当たり前の疑問だった。
「うん、別れたんだよ。結構前。」
「そっか…知らなかった。」
「当たり前だよ、ニノ君のこと避けてたんだもん。」
私は、翔君に何かと理由をつけられては会うのを避けられているニノ君のことが可哀想だった。
それでも翔君のことを大切な友達だと言ってくれるのも苦しかった。
だからつい、言い方が刺々しくなってしまう。
「避けてた、わけじゃ…」
「じゃあ何?どうしてずっとぎこちないの?」
「それは…」
「私、翔君のことずっと幼馴染だと思ってたよ。
でも、高校生くらいから段々なんか違う気がしてた。
翔君が私のこと聞かれるたびに『ただの幼馴染だよ』って言うのを聞いて、心臓がキュッとなった。苦しかったの。
なんでそうなるのかわかんなくて。それも苦しかったよ。
だから今、答えを出そうと思って。
私は自分の気持ちに向き合おうって思って、ニノ君と付き合うことに決めた。」
ハッキリしない翔君の態度に痺れを切らして、私は一気に捲くし立てた。
今まで話したことの無い胸の内。
翔君はそれを聞いてどう受け止めてくれるだろう。
私は椅子から立ち上がり、翔君を正面から見下ろした。
顔を上げた翔君と目が合う。
翔君の目はやっぱり苦しそうだった。
「翔君も向き合って。」
私はそれだけ告げると、今度こそ自宅へ帰った。
今の一言で、充分だと思った。
翔君はベンチでうな垂れていた。