第5章 Drunkard
お花見当日。天気は晴れ。風も弱い。
絶好のお花見日和だ。
「翔くーん!!準備できたー!?」
ベランダの窓をドンドン叩いてカーテンを開けさせる。
翔君はケンケンで窓に近寄ってきたようで、ドンッドンッと規則的な床を踏み鳴らす音がする。
片手でカーテンと窓の鍵を開けて姿が見えると、片手は靴下を履いているところだった。
「お前、遊ぶ時は支度早いのな。」
私が窓を開けると、呆れたような笑顔で翔君はそう言った。
私はちょっとむくれて今日の荷物を翔君に押し付けると、そのまま部屋に戻った。
「重いから持ってって!先降りてるからね!」
お母さんに出掛ける事を伝え、すぐに玄関を出る。
と、少し遅れて隣の家のドアが開く。
両手に荷物を抱えた翔君が雪崩るように外に出る。
「だらしないぞ~!ほらっ、歩いた歩いた!」
「ちょっとくらい持てよな~!」
お菓子にジュースにトランプにジェンガ…必要じゃ無さそうなものも入っているけど、備えあれば憂いなしと言うし。
それらの荷物を全部翔君に持たせて、私はニノ君に連絡を入れる。
待ち合わせの公園までは、大学と同じく歩くと30分程。
ちょっと遠いけど、その道中にも満開の桜が何本も植わってて、眺めながら歩いていれば距離感なんて全く気にならない。
「あ!ニノくーん!」
公園の入り口、携帯をいじりながら待っている猫背の彼を見つける。
遠くから声を掛けると、それに気付いてにこやかに手を振ってくれる。
「どーも。あれ、翔さん、もうお疲れですか?」
「そうなの。家から歩いてきただけなのにね?」
「お前らなぁ…!俺この大荷物を30分くらい1人でせっせと持ってきたんですよ!?」
翔君は肩で息をしながら荷物を一度地面に置く。
両手を大きく振って、肩の疲れを解放させているようだ。
しかし、ニノ君は自分で持ってきたであろう、足元にあったクーラーボックスを肩に担ぐと「行きましょうか。」と、スタスタ歩いていってしまった。
「小雨~!ニ~ノ~!!」
後ろから翔君の恨み言が聞こえたけど、私はおとなしくニノ君の後について歩き、置いていかれないようにした。
翔君はガリ勉君だけど、暇な時間は鍛えてるから体力あるの知ってるもん。