第4章 Shock
大学生活が始まって1ヶ月。
必修科目はもちろんニノ君も必修なので、3人で一緒に受けるのが暗黙の決まりになっていた。
ニノ君も朝は弱いらしく、起こしてくれる人がいないからか遅刻で来ることが多かった。
私と翔君はその度にプリントを取っておいたり、ニノ君の分まで板書してあげたりしていた。
これももう日常と化し始めている。
「いや~、今日も助かりました!ささ、好きなの頼んじゃってくださいね!」
わざとゴマをするようなジェスチャーをして、ニノ君は今日も学食を驕ってくれる。
ニノ君が遅れてきた日はこれもすっかり恒例となっている。
驕ってくれるのは嬉しいけど、私は一つ、疑問がある。
ただのアルバイターなんだろうけど、それにしてもそのお金の余裕…ニノ君は何で稼いでいるのだろうか…。
「ねぇ、ニノ君?」
私は姿勢を正して、目の前の定位置に座ってお箸を割るニノ君を凝視した。
改まった私の様子に、翔君まで動きを止める。
「ん?なんでしょう?」
ニノ君はキョトンとした様子でお箸を割った姿勢のまま止まった。
「ニノ君、いつも驕ってくれるけど…どこからお金湧いてるの?」
「ぶふっ!」
「んははっ!」
2人の反応は正反対。
翔君は思わぬ発言に衝撃の噴出し。
ニノ君はお腹を抱えて笑ってる。
「あ、ひどーい!だって、こう毎回驕られると気になっちゃうもん!」
「いや、だからってお前、金銭関係の話突っ込むのは失礼だろ!」
腕を組んで頬を膨らます私に、翔君は顔を覗き込んで来ながらニノ君の顔色を窺っている。
対してニノ君はお箸を置いて、さっきの私みたいに姿勢を正した。
それを見て、私も翔君もゴクリと唾を飲む。
「実は俺…」
深刻な面持ちで私と翔君を交互に見つめるニノ君。
翔君が私の肩に置いていた手に力がこもるのが分かる。
私も手に汗を握っている。
「酒屋の…」
酒?酒屋のなんだ!?
密売でもさせられているのだろうか…
あらぬ妄想が頭を駆け巡り、私と翔君は思わず見詰め合う。
「息子なんです。」
ニノ君はケロっとそう言うと、「いただきまーす」とご飯を食べ始める。
ニノ君は今日も麺類をすすっている。
今日はうどんか…。
「って、ちがーう!」
「酒屋の息子!?」