第1章 彼と別れた
俺の隣を歩く彼、クロハ。
クロハは俺の彼氏だ。
どうして俺みたいな女らしくもない奴を彼女に選んだかなんて知らない。
もしかしたら、遊びだったりするのかもな。
そう考えるとなんか苦しくて。
そうじゃないと分かっているが、
不安なんだ。
今は登校中。
周りからはクロハを見て騒ぐ女子の声。
そして、
「あの子がクロハ君の彼女?」
「うっわぁ、絶対釣り合ってないよね…」
俺への、悪口。
クロハは人気だから、俺は良く陰口されていた。
酷い時は嫌がらせされたり。
まぁ、物隠されるくらいの低脳さなんだけど。
「はぁ」
こんな憂鬱な気持ちになるなら、
なんで付き合った?
好きだから。
好きだから付き合った。
でも、付き合ったから俺は苦しんでる。
解放されるにはどうすればいい?
そんなの一つだけ。
別れればいい。
別れてしまえば赤の他人に戻れる。
でも、
本当は嫌だ。
「………」
嫌だけど、このまま嫌がらせを受けるのはもっと嫌だ。
女子の嫉妬って怖いからさ。
よし、決めた。
今日、別れを告げよう。
教室にクロハと入ると、冷たい視線が俺に向けられる。
なんであんたがクロハ君の彼女なの。
そんな感情が滲み出ている。
そんな視線に耐えて、俺は席に着く。
幸いクロハとは席が遠い。
今から落ち着いていよう。
別れを告げる時になって何も言えなくならないように。
クロハは女子に囲まれて鬱陶しそうだ。
「相変わらず、だな」
いつもなら少し嫉妬する俺。
だけど、
今日でこの関係も終わりだから。
そうでもなかった。