第8章 記録.8
「夏芽姉さんが、あんな奴が好きなんだとしたら僕。きっと家には帰ってきたくありませんよ」
庭の花を見つめながらそう独り言のように言う瑛翔。
「僕は翔馬さんが好きです。翔馬さんなら夏芽姉さんとのこと、応援します。」
「ありがとう」
「嫌なんですよ。夏芽姉さんがもし、捨てられちゃったらって。あいつが本当に会社の為だけに婚約したのなら、やっぱ姉さん。可哀想でしょう?」
瑛翔の目はやはり悲しそう。
確かに七瀬さんは、会社のためだと言ったうえでの婚約だった。
「なのに、夏芽姉さんはちっとも分かってないです」
「...え?」
何を分かってないんだ?