第5章 君の手 【Type M】
「潤君、ありがとう。」
潤君が掛けてくれたタオルを左手でつまみ、ひらひらと動かしてお礼の意味を伝える。
潤君は柔らかく微笑んで、また耳打ちしてくる。
「風邪引いたら手厚く看病してやる。」
不意打ちの言葉に照れている間もなく、今度は全員で手を繋いで最後のお別れのお辞儀をする。
潤君と繋いだ手が妙に熱い。
頭を下げた時、チラっと潤君を見てみると、潤君は握る手に力を込めた。
強くて、優しくて、なんでも包み込んでくれる、この手。
その手を、一瞬でも自分の物にしたいと、思ってしまったのでした。