【ハイキュー‼︎】【オムニバス】 岩泉一の恋愛事情
第2章 揺さぶられる……
そいつは、すとんと俺の中に入ってきた。
影山が入学した烏野に練習試合で2-1で負けた日。
シャワー室から出てくると、
『はじめ、くん?』
背後から柔らかい声で呼び止められた。
「あの、私……」
「おう、久しぶりだな」
すぐにわかった。
彼女だ。
数日前に母親が言っていた。
こっちに戻ってきて、うちの学校に編入したと。
「よかった、忘れられてなくて」
「忘れねぇよ」
彼女が父親の転勤で東京に引っ越したのは、俺が小学1年のとき。
一つ下の彼女はまだ幼稚園だった。
「うちに転校したんだっておふくろから聞いた」
親同士は親交を続けていたようで、どうやら彼女の母親に青葉城西を勧めたのはうちの母親らしい。
「わりぃ、メールもらってたのに返信してなくて。バタバタしてた」
「全然。勝手に送っただけだから」
「どうだ、久々のこっちは」
「自然が沢山あっていいよね」
「田舎だからな」
「そこがいいの。ようやく帰ってこれたから嬉しくて。で、はじめくんにも知らせようと思ってメールしたの」
子供の頃は郵便で、中学に入ってからはスマホで、たまにやり取りはしていた。
年に何度か。
あけまして、おめでとう。
誕生日、おめでとう。
何か特別なことがあった時。
でも、そんな程度のつながり。
そして3月、彼女からメールがきた。
『今度宮城に戻ることになりました』
メールを見て、なぜか気持ちがざわざわした。
なんだ?
わからない。
でも……
「はじめくん、背伸びたね」
「まあ……おまえはあんま変わってないな」
「かな……?」
首をかしげながら笑む彼女は……
すげぇ綺麗になってた。
昔から、日本人形みたいなヤツだと思ってた。
真っ直ぐな髪が綺麗で、色が白くて、すらりと伸びた手足が細くて、長くて……
「あれ?」
髪を拭きながら歩いてきた矢巾が立ち止まる。
「あ、矢巾くん」