【ハイキュー‼︎】【オムニバス】 岩泉一の恋愛事情
第7章 悩まされる……
はじめくんのガードをよけた及川さんに肩を掴まれる。
「おい、手どけろって!」
「俺は岩ちゃんの親友の、…」
「勝手に親友呼ばわりすんなっつうんだ」
「及川さん、……ですよね。有名ですから知ってます」
ぱあっと及川さんの顔が明るくなる。
小さい時のいじめっ子、及川さん家の徹くん。
顔はあんまり覚えてないけど、一瞬でぱっと周りが明るくなる華やかさは変わらない気がする。
「カッコいいって有名だから……ハーフだって噂も聞いてたけど……」
「ああ、ハンガー徹な」
「名付けたの岩ちゃんじゃん!」
「喜んで呼ばれてたのはおめぇだろうが」
ハンガー徹……?
首を傾げていると、「あ! やっぱり」と及川さんに指を刺された。
「君、昔、岩ちゃんちの近くに住んでた子じゃない?」
「え、あ…はい……」
「やっぱり。なんか見たことあるって思ったんだよね~」
「いらないこと思い出しやがって」
「なにそれ、岩ちゃん……てか、君、僕が小さい頃苛めてた子だよね」
苛めたことも爽やかに言われると、笑うしかない。
すらすら思い出した及川さんは、「やっぱり」「俺の記憶力最高」と自画自賛しながら、ニコニコこっちを見た後で、
「で、今は岩ちゃんの彼女なんだ?」
ツボははずさない。
「なんだっていいだろ」
「なにそれ、じゃあ彼女じゃないの? でも今さっき抱き合ってたじゃん」
「別に、そんなんじゃねぇよ!」
「ふーん、そうなんだ……」
納得したようなしてないような……
及川さんは、ふふんと小さく鼻を鳴らすと、「じゃあさ」と私の腕をつかんだ。
「……っ!」
「じゃあさ、俺と付き合おうよ?」
「え……?」
腕を取られたまま、茫然とはじめくんより少しだけ長身の甘い顔を見上げると、
「ね。俺、君のことタイプだし」
にっこり笑顔が返ってきた。
はじめくんが言ったことが思い出される。
『あいつ、あの頃、絶対お前のこと気にいってた』
『気になる子ほどからかいたくなる。男の本能だ』
なんか面倒くさいことが起こる予感がした。