第1章 プロローグ
電話の内容はこうだった。
「私、ジャニーズ事務所の人事を担当している者なんですが、先日の取材で男装をされていたメイドさんとお話することはできますか?
あ、あなたでしたか!
それでは単刀直入に申し上げますね。
ジャニーズ事務所に入っていただけませんか?」
ジャニーズ事務所と言えば男性アイドル。
それなのに男装していた私がスカウトされてしまうなんて!
好奇心旺盛な私はひどく驚いたものの、深く事情も聞かずに頷いてしまった。
辞めたくなったら辞めればいい。
レッスンを積んで、バックダンサーからデビューしていくのが定石なのだから、レッスンの段階で無理だと思ったらすぐに消えてしまえばいいのだ。
一度事務所に来てほしいとのことだったので、私は言われるままに、指定の日時にジャニーズ事務所へと向かった。
応接室に通され、しばらく待っているとたくさんの足音。
そしてドアを開けて入ってきたのは…
「嵐…?」
そう、あの日取材で会った櫻井さん、相葉さんの他にも、松本さん、二宮さん、大野さん…全員揃っている。
そしてスーツの男性が2名。
嵐の皆さんは私に軽く会釈をしたり、「おはようございます」と挨拶をしたりしてくれた。
しかし、その顔は優しいとは言いがたい表情だった。
険しかったり、眉間に皺を寄せていたり、私を歓迎している様子ではなかった。
「えー、では顔合わせを行いますのでどうぞ、座ってください。」
「えっ…と、顔合わせというのは…?」
私は状況が分からず、小さく手を上げながら進行している男性に問いかけた。
「あぁ、えーと、これから説明しますが、あなたには今日から嵐のメンバーになってもらいます。
隣のスーツは彼らのマネージャーで、私は社長の代理です。」