第1章 プロローグ
「メイド長、話が違いますよ。」
「え~?だって聞かれなかったから…」
「だからってさすがに嵐が来るなんて思わないですよ…!!」
テレビカメラや機材が運ばれるのを待っている間、メイド一同と男装をした私は店内の端で壁に沿って並んで立っていた。
他のメイド達の視線はみんな、カウンター席に座ってメイク直しをされながら談笑する嵐の櫻井さん、相葉さんに釘付けだった。
そんな中、私は真横に立っているメイド長に文句を言っていた。
こんな大きい取材ならもっと昨日は気合を入れてスキンケアしたのに…。
「では!スタンバイ完了したのでメイドさん達もこちらへお願いします!」
「は~い!」
メイド長は元気に返事をすると私にウインクを飛ばし、そのままカウンターの中へ入っていってしまった。
私はギャルソンになっていることもあって、他のメイドに続いて一番最後にカウンターに入り、端でニコニコと微笑んでいた。
やはり収録中はメイドが優先されるので、私はほとんどニコニコと笑ってドリンクを作ったりするぐらいなものであった。
超有名人が目の前にいるのに、話しているのはほとんどメイド長なのが少し羨ましくなった。
特に絡みも無いまま収録は終わり、夏になった頃、ようやくオンエアとなった。
店内にあるテレビを付け、お客さんと一緒にオンエアを見る。
私は…端にいたせいでほとんど映っていないが、男装のインパクトで印象はわりと残せていると思う。
画面を見ながらうんうんと頷いていると、お店の電話が鳴った。
「あ、私出ますよ!」
メイド長が電話に出ようとしていたが、きっとテレビが気になるだろう。
私は代わりに電話に出た。
「お待たせいたしました!メイド喫茶の…え…?あ、はい、私です…はい、はい…えぇーっ!?」