第5章 運命共同体のシンデレラ
関東公演が終わり、地方公演へと移動する。
関東での仕事が無いメンバーはそのまま前乗りして行くが、私はメイド業をこなしてから会場入りすることになっていた。
とんぼ返りを繰り返しながら、5箇所回るツアーも3箇所目まで来た。
ここまで来ると、私の身体もガタが来始める。
「もういいや。」
楽屋でメンバーとケータリングの昼食を食べている時。
疲れのせいで食欲より眠気が勝っているせいか、ここ数日はまともにご飯が喉を通らない。
カレーをよそって来たのはいいものの、半分も食べずにスプーンを置く。
「全然食べてないじゃないですか。」
「うん…お腹いっぱいで。」
隣で食べていた和君が皿を見ながら心配そうに覗き込んできた。
「寝ますか?」
「そうしますかね。」
ツアー中の会場内では常に男装でいるため、今は男モード。
いつスタッフがドアを開けてもいいように、さらしも巻いてある。
楽屋のソファで昼食をとっていた私は、座敷に上がって横になった。
セットリスト通りのプレイリストをイヤホンで流すのは忘れない。
シャワー用に置いておいた大きなバスタオルを身体に掛け、皆に背を向けて目を閉じる。
するとすぐに眠りの世界へと落ちていってしまった。
「小雨、疲れてんのな。」
「にのも思った?」
「やっぱりJは気付いてると思いました。」
「いや、でも実際1番ハードに動いてるもんな~。」
「分刻みで動く翔ちゃんでさえ認めるってことは、相当ハードなんだね!」
「雅紀、基準がおかしいぞ?」
「…一番、ストイックだし。おいら達の足引っ張んないようにって、見えないとこで頑張りすぎてるんじゃないかな~。」