第4章 王子になったシンデレラ
ステージ確認を終え、最後のフリ確認や歌詞確認も終えると、あっという間に開場時間。
メンバーは全員着替えに入る。
残りの着替え衣装は全て奈落にある個々の着替えブースに設置される。
私のブースはジュニアのブースから最も遠くに設置され、念のためにカーテンも付けてある。
嵐のブースの中でも端に置かれているため、隣は1人。
雅君のブースだった。
1曲目はブースからプッシュアップで登場する。
私の出番はまだまだ先。
ブース内にあるモニターからステージの様子を見ながら出番を待つことになっている。
「小雨~!俺の活躍、ちゃんと見とけよ~!」
雅君はプッシュアップの台に乗って待機しながら、隣の私に指を差してウキウキ顔だ。
私も楽しそうな雅君を見て、笑顔になる。
少しだけ緊張を忘れられた。
「雅君、後から行くから!頑張るね!」
「おぅ!待ってるぞ!」
ステージではもう導入の音楽が鳴り始めている。
すごい重低音が体中を駆け巡る。
待機している雅君はプッシュアップの台からステージの方を見上げている。
その先にも、点々と他のメンバーが見える。
みんな上のステージを見上げ、高揚している。
私も、楽しみになってきた。
コンサート前半、ノリのいい曲が続き、MCを挟みながらソロ曲やしっとりした曲が入る。
合間合間にメンバーはブースに戻って着替えと簡単なメイク直し。
隣の雅君は常に楽しそう。
「小雨!ステージに立つって、すっごい楽しいよ!」
キラキラした目で雅君がそう言ってきた。
顔を見ればそんなことはすぐに分かる。
雅君は言いたいことだけ言うと、すぐに出番でステージへと戻っていく。
「いよいよだ…。」
次の曲から私の出番。
嵐の気象小雨になる時間。
「行くぞ。」
私は人知れず気合を入れ、登場場所まで移動した。
そしてイントロが流れ、いよいよ光の中へ。