第4章 王子になったシンデレラ
よく、眠れなかった。
ドキドキして。
寝る寸前までセットリスト順に並べたプレイリストをイヤホンで聞いていた。
どこかへ行ってしまった眠気を必死にかき集め、やっと眠りに付いたのはもう朝方。
「ふあぁ…うぅ~ん…」
控え室で寝ぼけ眼をこすりながらメイク道具の前に座る。
初日の今日、公演は夜からだが、最終確認で朝から全員会場入りをしている。
「やだ~!せっかくお披露目の日だっていうのにこんなに顔むくませて~!」
「うぅ…ごめんなさい…」
メイクさんに怒られながらもむくみを取るマッサージを施してもらい、あとはメイクさんの魔法によっていつもの顔を取り戻す。
今日はさらしもウィッグも着けっ放しで過ごさなくてはならない。
いつものスタッフの他にも、事情を知らない会場スタッフやジュニアがいるからだ。
念のため、入りの時とは違う私服に着替えてステージの確認に向かう。
「おはようございます!」
マイクを受け取り、イヤモニを付けながらステージに上がる。
会場スタッフが照明や音響を確認している中、ジュニアもステージのあちこちに散らばって振り付けの確認を行っていた。
私の挨拶に、全員がこちらを見て挨拶を返してくれる。
すごい人数だ。
本番は、この広い会場が更にファンでいっぱいになる。
私は今更になってプレッシャーを感じ始めた。
「よッス。」
「あ、潤君。おはよう。」
「緊張してる?」
「うん…ちょっと。」
私の顔が強張っているのを感じてか、スタッフと打ち合わせをしていた潤君がそばに来てくれた。
「緊張しないわけないよな。俺も今、ちょっと緊張してるくらいだし。」
「潤君も?」
照明がカラフルにステージの色を変えている。
私は隣に立ってステージ全体を見渡す潤君をまじまじと見つめた。
いつも堂々としてみんなを引っ張ってくれる潤君。
そんな人でも緊張することってあるんだな。
「何その顔。俺だって緊張くらいするよ。」
ふとこっちを見た潤君は、少し笑いながら私の頬をつまんだ。
「いひゃい。」
「痛くしてんの。」
私の緊張を解そうとしてそういうおふざけをしてくる潤君。
頬をつまんだ手を離すと、再びステージに目を向けてしまう。
でもその横顔は、照明がたまにチラチラと潤君を照らして幻想的。