第4章 王子になったシンデレラ
秋。
いよいよツアー初日を迎える。
今日は前日の通しリハーサル。
ツアー中もカモフラージュ作戦は続けることになり、モデルとメイドは休みを増やしてもらいながらも働きに出る。
コンサートの合間を縫って、モデルやメイドをしにとんぼ返りすることも度々あるだろう。
正直体力が心配だ…。
「でも、ここまでの過酷なダンスレッスンに比べればなんてことない…!」
不安に苛まれるといつも鏡を見ながら記憶を呼び起こし、あの苦しかった練習の数々を噛み締めるようにしていた。
汗だくになって踊り続けた日々に比べれば、ただ移動が多いだけの忙しさはなんてことはないはずだ。
そうして私は自分の両頬を叩いて気合を入れるのだった。
「よし!じゃあ小雨君、さらしの調整するからこれ着けてみて~?」
スタッフさん達の衣装合わせが私の後ろで行われており、私はスタイリストさんから特注の胸つぶし用サポーターを受け取った。
通称、さらし。
本物のさらしのようにグルグル布を巻きつけるわけではなく、私の肌色に合わせた伸縮性の素材をホックで留める物だ。
撮影用などでもさらしは使っていたが、それまで使っていた物は胸をまったいらにする為に結構なキツさで締めてくるタイプのものだった。
しかし今回はコンサート。
動きも激しくなるということで、もう少し締め付けを緩くするのと、うごいてもズレ落ちないように改良をしてくれたようだ。
「どう?どう?」
「あ…軽いですね。締め付けは…キツいっちゃキツいかなぁ…でも、そこまでキツくはないので大丈夫だと思います!」
私はさらしをつけたまま軽く踊ってみたり、ジャンプしてみたりしてずり落ちも確認した。
大丈夫なことが分かると、私はスタイリストさんにOKサインを出した。
「あ~良かった!じゃあこれ着けたまま今日の最終リハやってみよっか!」
「はい!」
さらしの上から衣装を着込んでいく。
コンサートではどんどん脱いでいって衣装チェンジが行われるため、なかなかの重さがある。
そこからさらにウィッグを被り、ウィッグの具合も調整が行われた。
派手に動いてもずれないように、今回のウィッグまで特別仕様。
最終リハーサルはなんとか無事に終えた。
登場場所や移動など、全てを入念にチェックしながら通したが問題は無かった。