第3章 現実のシンデレラ
撮影後、数分でデータをもらえた。
やはり。
いつもの数十倍も綺麗に映っている、気がする。
「ハァ~…でもせっかく撮ってもらったし…提出するか…。」
私はデータを携帯に移し、3枚ほど選んでメイド長に送った。
メイドの皆になんて言われるか…次の出勤が恐ろしい…。
そんな不安を抱えながら出勤の日が来てしまった。
いつもどおりを装って、お店に入る。
「おはようございます!」
「あっ!あめ先輩!」
「あの写真どういうことですか!」
「綺麗過ぎませんか~!?」
お店に入るや否や、後輩のメイド達が私に詰め寄ってきた。
私は誰とも目を合わせないように視線を泳がせ、曖昧に笑って返事の代わりをした。
「どこで撮ったんですか!」
「誰に撮ってもらったんですか!」
「あのメイクはなんなんですか~!?」
「えっ…と、」
私は後輩達の勢いに気圧されて言葉を詰まらせたが、そこにようやくメイド長が現れた。
「はいはい、みんな落ち着いて。あめちゃん困ってるわよ~?」
「あ、ははは…。」
後輩達は口々に文句を言いながら私から距離を取っていく。
「それで?どういう経緯であの写真が出てきたのかな?」
メイド長も優しくはなかった。
私は今度こそ頭をフル回転して言い訳を考えた。
「あの~…えっと…あ、モデルの時に、ですね!ついでに!」
「なるほど~!」
「いいなぁ~…」
「ずるいですよぉ~!」
後輩達は自分達の写真と私の写真を比べながらずっと羨ましがっている。
どうやら上手く引っかかってくれたようだ。
だが、メイド長だけは「ふぅ~ん…」と、意味ありげに目を細めたままだった。
この人、食えないな。