第3章 現実のシンデレラ
「やっぱりたまには女の子も撮らないとね!感性が鈍っちゃうよ!」
カメラマンさんにも仕事を増やして申し訳なく思っていたのだが、こちらの想像より遥かに乗り気で照明を直したり、レンズを切り替えたりしていた。
「すみません…ほんの数枚でいいので…お願いします。」
私は最大限の低姿勢でペコペコと頭を下げた。
カメラマンさんがいよいよカメラを構える。
私はモデルモードに気持ちを切り替え、早く撮影が終わるようにキビキビとポージングを変えていく。
「いいね。もう少しカメラ睨んで。そう。」
カメラに集中して、頭の先から足の先まで油断させない。
そんな姿に、メンバーはみんな黙って撮影を眺めていた。
「あの、もうこんなもんで大丈夫です。」
「そう?データ確認する?」
「いえ、信頼してますから。」
「嬉しいこと言ってくれるね~!じゃあすぐにデータ送らせるわ!」
「はい、お願いします!」
ふぅ、と一息ついてメンバーの元へと戻る。
皆はなぜか拍手で迎えた。
「すっげー!めっちゃモデル!って感じ!」
「そりゃモデルしてんだからモデルでしょうよ。」
当たり前のことをいう雅君に、和君も突っ込みを入れる。
そして、さりげなく私の隣に立って翔君に写メを撮らせる潤君。
「なっ…!ちょっと、潤君!」
「大丈夫大丈夫。鍵付きのフォルダにしまいますよ。」
「流出は俺にだけでお願いします。」
「翔君…!」
なんともいえない疲労感が私を襲う。
そういえば、と思い、足りない1人を目で探してみる。
ここまで何もせずにただ黙って少し離れたところに突っ立っていた智君がゆっくりと近づいてくる。
「智君…?」
「うん、やっぱり綺麗だ。」
一言だけ、微笑みながらそう言った。
私は急に恥ずかしくなって、慌ててメイク室に戻った。
智君は、たまにそう。
普段は男として扱ってくれるけど、男装してない時はたまに自分が女だって思い出させてくれる。
そういう気遣いが嬉しいけど、危ないな、とも思う。
だからファンもたくさんいるんだ。