第2章 始まりのシンデレラ
全員の使命を確認したところで、今まで黙って聞いていたスタッフ達がツアーの話を始める。
どうやら、今集まっているスタッフがこれからも専属で嵐と動くメインスタッフになるらしい。
私が女であることを知っている、数少ない味方達だ。
「じゃあ、とりあえず2回目のMCまでは5人でやるか。」
仮の進行表が全員に配られ、それを眺めながら松本さんが提案する。
秋のツアーとはいえ、私にはダンス経験も歌の経験も、ましてや大勢の人前に出てライブをすることなどやったことがない。
スタッフとしても男装している状態で何があるか分からないため、出演曲数を減らして様子を見たいということらしい。
「後半からっつっても曲数はそこそこ多いけど、できる?」
櫻井さんが曲候補のリストを捲りながら私に問いかけた。
「やります!」
私は進行表を握り締め、強い眼差しで櫻井さんを見つめた。
櫻井さんはそれを確認すると、うん、と一つ頷いた。
それから先はほとんど松本さんとスタッフさん達のやりとりで、他のメンバーはたまに進行表に書き込みをしたりして、聞いてるのか聞いてないのかわからないような雰囲気だった。
私自身も何一つ用語が分からないのでメモのしようがなく、置いてけぼりになりながらも所々分かる箇所をメモに取った。
そのミーティングから数日経ち、セットリストが正式に決まったことが伝えられ、ダンスレッスンも歌のレッスンも過酷を極めた。
昼間はモデルの仕事へ行き、夕方からはメイド。
そして夜間は諸々のレッスンを受け、移動中は常に歌詞を覚える作業。
たまには全員揃わなくとも、メンバーとフリ合わせや立ち居地の確認をすることもあった。
そんな時、いつも遅れを取りたくなくて、私は毎日毎日ひたすら歌い踊った。