第2章 上京してから
飛行機やら電車やら慣れない乗り物に乗って東京さ着いたのが翌日の午前11時13分という微妙な時間でしたばい。東京さ来たのは勿論初めてやけん。何もかもが目まぐるしゅうたわ。
「あつなっと、わっかもんのクルマでさらくけん、うるしゅうてしょんなか。」
私は電車を降りて東京駅を出るとしばらく周りを見回しました。人さいっぱいおるわ、建物が大きいわで目が回りそうでした。それでも行かなと思い人ごみの中を必死に歩きました。
「東京さの人は毎日これを経験しとるんわ。私もはよ慣れんとな。」
もうすぐお昼になる時間ですが私はどこで食べたらいいのか分からずとにかくお笑い養成所へと向かいました。私が熊本で精密工業で働いていた時にとある養成所を見つけて履歴書を送っていたのです。それが見事に一次審査が通ったのでこの日は養成所にてグループ面接を受けるのですたい。養成所が段々近くなるにつれて私は緊張してきました。
「もしこれで受かなかったらどうしよう。」
あんなに自信満々だったのがすっかり不安へと変わっていきました。そして養成所の前まで来ると唾を飲み込んで重いドアを開けました。その養成所の名前は『本気塾』という名前の養成所です。結構前からあるみたいです。←ちゃんと調べとけって。
受付を済ませて暫く廊下を歩いていると何人かはもう待合室で待っていました。それにしてもグループ面接は誰と一緒やったけなあ?なんて私が思っていると横から誰かが私に声を掛けてきました。
「あれ?君はどこから来たの?」
この人は何ゆーてんやろう?でも来たっていう言葉はわかったなあ。私は急いで鞄から標準語の本を取り出してページをめくるとぎこちなくこう言いました。
「私は山本千花夏といいまっす。熊本から来ました。よっよろしくね。まだ標準語に慣れてないですが話せるようにならたいです。」
私に話しかけてきたのは顔がやけに丸い男の子でした。
「僕は佐賀県から来たんですよ。そんな僕の名字が珍しくてね。なんだと思います?」
私は本のページをめくりながら聞きました。
「わかりませんね。なんて言うんですか?」
「僕の名前は最初って言います。佐賀では結構この名字の方いますよ。」
そんな話をしばらくしていると面接官さんが私達を呼びました。
「グループ面接、お互い頑張ろうな。」
この時私は最初君と面接が一緒なんだと気がつきました。