第1章 上京する前はこんな子でしたばい
次の日は学校帰りに本屋に立ち寄った後図書館に行きました。司書さんにパソコンを貸してもらえるように頼みました。そして許可をもらうとネットで芸能事務所をアレやこれやと調べました。
「お笑い芸人さ入っとる事務所は吉本興業、松竹芸能、マセキ芸能、太田プロにえっと人力舎にあ~タイタンさ見たことあるね。」
でもやっぱり吉本興業か松竹芸能が有力かなと私は思いました。
「そういえばこの間見た芸人さんはどこの事務所の人やったんやろう?」
この間ロケで見た芸人さんを調べてみましたが私の知らない事務所に入っていたので諦めました。
「吉本は東京と大阪に分かれとるんや。えっとそれで学費は・・。」
私は学費の高さに言葉を失ってしまいました。
”入学金 100,000円(税込)
授業料 1ヵ月25,000円(税込)
学費納入規定 合格決定後、入学金と1年分の授業料・合計400,000円を納入
希望者に「学費ローン」(要審査)制度あり。”
「でも1年間通えばええんや。さてお金はどうしよう。」
やっぱり諦めんければアカンのやろうか?
「いや、ここまで来たんや。諦めへんで。」
私はパソコンをシャットダウンして図書館を出ると家に帰りました。家に帰ると父は仕事でいませんが母も家にいませんでした。そして今家にいるのは弟と私です。
「ただいま~。」
私が玄関のドアを開けて中に入った時に電話が鳴りました。
私が急いで受話器を取ると相手はおばあちゃんでした。
「どうしたと?」
「元気にしとるかなあて。」
私は最近おばあちゃんに電話していなかったので今までのことを全部話しました。
「それはいかんとね。でも学校のお金が高いんじゃろう?」
「うん・・・。そうなんだ。でも私は女芸人になることを諦めきれんのよ。」
「ならばあちゃんのお金貸そうかね?」
「え?でも・・・。」
「遠慮はせんと両親が反対してる今は何言っても無駄だしな。それと私も説得すけんね。」
私はおばあちゃんの言葉に耳を疑いました。
「でもお金を送とったらばれるとよ。どないすんの?」
私は心配してお婆ちゃんに聞きました。
「心配することなかよ。」
おばあちゃんと話したあとふとテーブルに置いてあった精密工業のパンフレットが目に入りました。
「そんぎゃ、ばーちゃんばかりに迷惑かけたくなか。私も精密で1年働いて金を貯めてから養成所へ行くんや。頑張るばい。」