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愛されたい症候群。

第7章 答えが出ない自問自答




「…まーた珍しい顔が出よったな」

「どーも」

「ぇ…っ」


目の前に現れた私よりずっと大きな背中

どうしてここにいるの


「財前…?」

「謙也は元気にしとるか?」

「まぁまぁっすね。で、悪いんすけど
コイツに用あるんで連れてきますわ」

「俺が先約なんやけどな」

「俺も急ぎなんで」

「向こう帰らなあかんでしゃあないか。
ええけどそん代わり、霜月」


名前、というか苗字
呼ばれただけで身体が凍るみたいだ

うわさっきまで気づかなかったけど
私、指先震えてるじゃん
なんだこれ ダサいかっこ悪い


「連絡先交換してくれや」


嫌だと心の底から言いたかったが
言えばどうなるか分からないって
考えてしまってる私に
拒否することはできなくて

連絡先に増えた新しい名前


見ただけで吐き気がする



私といつでも連絡がとれることに
満足したのか
忍足先輩は「じゃあ、また」とだけ
言って帰っていった

また、が無いことを願いたい


「大丈夫か」

「あ、うん…ごめんありがとう。
用事ってなに?」

「そんなもん無い」

「はい?」

「もう向こう帰るし
最後に霜月のアホ面見てから
帰ろ思っただけや」


私から顔を背けながら
言うそのセリフはツンデレか何かか

彼なりの照れ隠しだろうか

きっと財前は私が困っているのを
見て助けてくれようとしたんだ


「ありがとね」

「アホ面言われてなにお礼言ってんねん。
やっぱりアホやな」

「はいはい。アホですよ」


なにも事情を知らないのに
わざわざ庇ってくれて
その後もこうして話してくれてる


そして、私があの人をあんなに
怖がっていた理由は聞いてこない


今まで中学のことは
誰にも言ってこなかった

友達と呼べる人も中にはいたけれど
過去の暗い話を聞かして
離れていくのが怖かったから


だから1人で抱えて
勝手に平気になった気になっていたけど

これからも私は死ぬまで
1人で怖がっていくんだと思うと
どうしようもなく虚しくて悲しい


誰かに話せば変わるのかもしれないと
思っていた でも実行できなかった

もしかしたら、財前になら


「ねぇ財前。もう帰らなきゃだめ?」

「別に平気やけど」

「お礼に奢るわ」


期待はしない
これはただの気まぐれだ




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