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愛されたい症候群。

第5章 今日はあんみつ食べに来たけど




怪しくない要素がない俺の
急すぎる意味不明な行動、質問に
彼女は嫌な顔一つせず答えてくれた

結果


「ここのぜんざい美味しいですよ」

「アンタも好きなん?」

「まぁ。今日はあんみつ食べにきたけど」


一つのテーブルに
向かい合わせで座る俺たち

よく分からない流れで
一緒にお茶することになった


俺としてはラッキーしかないのだが
少しも疑わずヒョイヒョイと
ついてくるコイツに逆に不安になる


「そういえば関西弁ですけど
遠くからいらっしゃったんですか?」

「大学のサークルの遠征っすわ」

「大学生なんですね。
…年齢聞いても大丈夫です?」

「19。1年」

「なんだ。同級生でしたか」


変に緊張してしまって
ぶっきらぼうな答えしかできない

笑うのも苦手だから
愛想が無いだろう わかってる

…思えば思うほど
とことん自分最悪じゃないか
自己嫌悪に陥るなんて今まで無かったのに


「アンタも19なん?」

「はい。…同級生なら敬語はいっか。
働いてるから大学生じゃないけど」

「もー働いてんか。お疲れやん」

「大学行くお金無かったし。
あ、言い忘れてた…
霜月慶です。どーも」

「霜月…?」


どこかで聞いたことある苗字だが
思い出せない

それより名前が聞けたことが嬉しい
自分の中にこんな純粋な気持ちが
あったことに驚きだ


「そう。霜月。君は?」

「財前光」

「財前ね。ぜんざいが好きそうな名前だ」

「どんなイメージやねん。アホか」

「初対面で失礼な人だな。
アホなのは認めるけど」


黒髪で色白で大人しそうな見た目だし
自分とは話が合わないかもしれない、
なんてのは杞憂で

霜月は意外に話しやすい
そのことにホッとした



30分くらい適当に喋って
連絡先も交換して

「またね」

「おう」


最後までぶっきらぼうな自分に呆れたが
〝また〟があることが嬉しくて
顔に出ていたかもしれない


「なんや財前。良いことあったんか」

「なんすか急に」

「珍しくムスってしてへんもんな」

「いつもよか雰囲気やわこい感じするわ」

「なんもあらへんっすよ」


連絡先に追加された名前

なんて送ろうか、と迷ってる
こんな自分がいたことに気づけて
良かったのか悪かったのか

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