第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
「モモ様、わたくし…やってみたいことができました。」
再会の約束のあと、しらほしはモモに言った。
「え、やりたいこと?」
リュウグウ王国を出たことがないしらほしは、まだまだやりたいことだらけだろう。
けれど、わざわざそんなふうに言うから目を瞬かせてしまう。
「なぁに?」
冒険のほかに、しらほしがやりたいことはなんだろう。
気になって尋ねると、ほんのり頬を赤らめたしらほしは、こう宣言した。
「わたくし、恋がしてみたいです!」
「え…、恋?」
その答えはモモの想像と大きく違っていた。
恋を知らないしらほし。
でもモモ自身、彼女が憧れるような恋はできていない。
けれどしらほしは、目を輝かせながら言うのだ。
「はい。わたくしはモモ様のように、誰かを深く愛してみたいのです。」
恋って、キラキラした楽しいものだと思っていた。
だって物語で読む恋は、いつでも砂糖のように甘いものだったから。
でも昨夜、モモは想い人であるローの気持ちを跳ねのけた。
しらほしにはその理由が想像できないし、できたところで理解できるわけもない。
しらほしは恋を知らないのだから。
けれど昨日、恋は甘いだけでなく、切ないものなのだと知った。
誰しも辛い思いなんてしたくない。
けれどしらほしは、そんなモモの姿を見て“恋をしてみたい”と強く感じたのだ。
洞窟内でローを想って泣いたモモ。
自分の想いを伝えられず、ひとり耐え忍んだモモ。
どんな彼女も、とても素敵に思えたから。
だから、自分も恋をしてみたい。
「次にお会いした時は、一緒に恋についてお話ししましょう。」
聞かせて欲しい、もっともっとモモの恋を。
その頃には自分も、素敵な恋をしていたい。
「わたくしの恋の相談にのってくださいね。」
「…うん、わかったわ。」
約束するわ。
次に会った時には、笑顔で恋を語れるように。
2人にしかわからない約束を交わし、モモは笑顔で手を振る。
「またね、しらほし!」
「はい! ルフィ様によろしくお伝えください
!」
さあ、行こう。
新世界へ!