第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
ゴゴゴ…。
洞窟に響く地鳴りは、ローたちの耳へも伝わってきた。
水中にいる分、振動が身体へ直に伝わってくる。
「うわ、なんだ今の。地震…?」
バランスを崩しかけて揺れるコハクの身体を、咄嗟に支えた。
「さァな…。だが、状況が変わったのは確かだ。」
「…?」
ローの言葉の意味がわからず首を傾げたけど、答えはデンの口から飛び出してきた。
「2人とも、見てくれ…! 陽樹 イブが…!」
やけに興奮した声に振り向けば、さっきまで沈黙を続けていた樹の根が、どういうわけか光り始めた。
「わ、光ってる! 治ったのか!?」
あれだけ原因を調べてもわからなかったのに、どうしたのだろう。
一変した状況に驚くが、それよりも喜びの方が強かった。
これで魚人島に再び光が射す。
そして、モモの疑いも晴れるはずだ。
「オイ、喜ぶのはいいが、俺たちはこんなところにいていいのか。」
喜ぶ2人に水を差すようだが、ローとしてはそちらが気になってしょうがない。
「「え…。」」
喜びに夢中で一瞬指摘されたことの意味を飲み込めなかったコハクとデンは、揃って呆けた顔をした。
まったくコイツらは…。
つくづくここにいるのが自分で良かったと思う。
「この樹が光を取り戻したら、俺たちはどうなる。」
「どうなるって、そりゃ…。ああッ、しまった! こんなことしてる場合じゃない!」
先に我に返ったのはデンだった。
「大変だ、早く外へ出ないと、光で目が潰れてしまう…!」
「ええッ!」
続いてコハクも我に返る。
そりゃそうか、この洞窟へは陽樹 イブがこの状態だからこそ入れたのだ。
このままここにいれば、どのような結果になるかはデンが言った通り。
「頭が回るようになったなら、サッサとここから脱出するぞ。」
陽樹 イブが光るようになった以上、ここにいる意味はない。
早く脱出しないと、大変なことになる。
しかしローの胸は、脱出の焦りよりも別のことでいっぱいだ。
モモ、お前…今どうしてる。
どうか1秒でも早くここから抜け出してくれ。
自分のことよりも、彼女のことが心配で堪らない。