第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
「え…ッ!?」
突然暗くなった森に、モモは驚きの声を上げた。
海の森は街中と違って街灯などの灯りがまるでない。
陽樹 イブの光がないと、本当に真っ暗になってしまうのだ。
そして世界樹が光を失って驚いたのは、なにもモモだけじゃない。
「陽樹 イブが光を消した…!? そんな、まだ地上に日が昇っている時間だぞ!」
「なぜだ!? ええい、誰か、灯りを持ってこい!」
しらほしの護衛を務める兵士たちが、一斉に騒ぎ出した。
しかし、動こうにも前も後ろもわからなくて、みんな少しパニックになってしまっている。
「ふえぇ…、怖いです…ッ」
しらほしが半べそをかく声がする。
彼女の傍に行ってやらねば。
けれどモモとて、誰がどこにいるのか、自分がどこにいるのかわからない。
それでもなんとか前に進もうと恐る恐る足を踏み出した時、ローが自分を呼ぶ声が聞こえた。
「モモ…!」
「ロー!」
こんな暗闇の中でも、彼の声を聞くとすごく安心できる。
「動くな、そっちに行く。」
「あ…。」
でもローだって、見えないのは同じじゃないか。
焦る気持ちがモモの足を進ませた。
けれど、どんなに気をつけていても、彼女の運動神経は残念としか言いようがない。
「きゃ…ッ」
樹の根かなにかに躓いて、お約束のように転んだ。
「いった…。」
受け身もとれず、思いっきり手のひらと膝を擦りむいてしまう。
モモの傍をヒスイが心配そうにチョロチョロするのがわかる。
大丈夫だと声を掛けようとした時、すぐ間近から声が降ってきた。
「オイ…!」
「…!」
走ってきたローがすぐさま傍らに跪き、助け起こしてくれる。
この暗闇で、どうやってモモの位置がわかったのだろう。