第39章 欲しいもの
「ハートの海賊団、ジャンバール! 覚悟!」
もう何度目とも知れない雄叫びが上がり、マングローブの樹の上から奇襲される。
「きゃあ!」
モモは飛びかかられて初めて相手の存在に気がついたけど、ジャンバールはもっと前から気づいていたようで、まったく焦りもせず、ドカンと一発お見舞いして返り討ちにする。
「うげぇ!」
簡単に吹き飛ばされた相手は、カエルのような呻き声を上げて崩れ落ちる。
「ジャンバール、強いのね。」
さっきから襲われるたび、まるで虫でも追い払うかのように打ちのめす彼に、感嘆のため息がでた。
いちいち驚く自分が恥ずかしい。
「あんなザコ、相手にならん。」
当然のように言うから、すごく頼もしい。
「でも、ジャンバールって、けっこう有名人なのね。」
さっきから襲ってくる人たちは、全員ジャンバール狙いだ。
いつも自分ばかりが狙われていたモモにとっては、なんとも肩透かしを食らった気分になる。
「アイツらは賞金稼ぎの連中だ。一応俺も賞金首だからな、狙われて当然だろう。」
なるほど、賞金稼ぎの人たちだったのか。
モモはホワイトリストの手配者ゆえ、一般の手配書が世間に出回ることはなく、そういった人たちに狙われることはない。
(そういう意味では、わたしもみんなも同じ立ち位置なのかな…。)
自分だけが特別のような気がしてたけど、本当はそんなことないのかもしれない。
ジャンバールひとりでコレなのだから、ローたちはもっとすごい歓迎を受けていそう。
でも、彼らの強さは知っているから、そんなに心配はしてないけど。
「もうすぐ30番グローブだ。あそこからはこういった無法者は減るが、その分海軍の連中が多い。あまり俺から離れるなよ。」
「…うん。」
それはモモにとって、危険が増すことを意味しており、改めて気を引きしめた。