第37章 冒険の海へ
「ふふ…ッ」
いつの間にか、涙が止まって笑みが零れた。
「母さん…?」
「しょうがないわね…。コハクを人質にとられたんじゃ、従わないわけにはいかないもの。」
「……! それって…!」
「船に、乗るわ…。」
本当にそれが正しいのかは、わからない。
でも今は、彼らの優しさに甘えていたいんだ。
「「ぃよっしゃー!!」」
なりゆきを見守っていたクルーたちから、歓喜の雄叫びが上がった。
「これでモモとコハクは、俺たちの仲間だー!」
「おい、ヒスイを忘れんなよ!」
「きゅきゅ!」
「おっと悪ィ…。よっしゃ! そうと決まれば歓迎の宴だぜ!」
「お、じゃあ俺、モモの酒を持ってくるッス!」
昨夜も宴をしたというのに、よほど嬉しいのか全員バタバタと駆けていく。
その勢いに呆気にとられ、しばしモモは固まる。
そして未だローに抱かれたままだったことを思い出した。
「……ッ」
急いで身を離すと、気のせいかローが舌打ちをした気がした。
「今、なにか言った?」
「イヤ…? ようこそ、俺の船へ。逃がしはしねェから、覚悟しろよ。」
だから逃げないってば…。
その獲物を見るような目か嫌で、じりりと後ろへにじり寄った。
「母さーん! ほら、こっち来いよ!」
コハクの呼ぶ声に気がつき、そちらへ足を向ける。
「どうしたの?」
「見ろよ、見渡す限りの海だ! オレたち、海へ出たんだよ。」
そう、ここから先はまだ見ぬ世界。
モモとコハクは、今日その1歩を踏み出した。
「母さん、オレ、楽しみだ…!」
「うん。」
コハクの冒険はこれから始まり、モモの冒険は再び動き出す。
さあ、行こう。
冒険の海へ!