第37章 冒険の海へ
ローとコハクの間に、そんなやり取りがあったことなどまったく知らないモモは、急すぎる展開に慌てふためく。
「ま、待って…! どうしてそんな話になったのかは知らないけど、わたしは海に出るつもりはないの!」
ずっとあの島で、みんなの無事を祈るんだって決めているんだ。
「お前にそのつもりがあろうがなかろうが、知ったことか。諦めんだな。」
「ええ…!?」
なんて勝手な人!
ああ、でも思い出した。
ローはもとからこういう人だった。
でもだからって、ハイそうですかと納得するわけにいかない。
「そんな…、無理よ。わたしには島に大切な子たちがいるの。」
大事に育てた薬草たち。
彼らを放っていくなどモモにはできない。
それを理由に船から降ろしてもらおうと考えると、横からいらない一言が入る。
「薬草の世話なら、サルたちがしてくれるよ。」
「え…ッ」
「アイツら、母さんと一緒に世話をするうちに、すっかり手入れが上達して、今じゃプロ並みだよ。心配しなくても、サルたちに任せておけば大丈夫。」
ほら、とコハクが指さす方向を見れば、海岸でサルたちがジョウロやスコップを持って手を振る姿が確認できる。
いつの間にかそんなテクニックを身につけていたらしい。
「えっと…、でも、調合器具や薬の材料だって、みんな家の中だし…!」
「あ、それなら全部持ってきたよ。」
「ぅえ…!?」
今度はベポたちが最後に持ってきた荷物を開いてみせた。
大きな荷物の中には、モモの仕事道具を始め、衣服や日用品、さらにはキッチン道具までもが詰まっている。
ああ、なるほど。
これでは本当に家の中は空っぽだろう。
なに…?
みんな、わたしが船に乗ることを知っていたの?
知っていて、今までモモに気づかれないように準備してきたというのか。