第37章 冒険の海へ
『無理じゃねェさ。別に俺は、なにもアイツを納得させた上で連れ出そうなんて言ってねェ。』
は…?
じゃあなにか、母さんになんの説明もなく、無理やり連れ出そうってことか。
あんまりにも横暴なやり方に、コハクは目くじらを立てる。
『じゃあお前は、アイツの気が変わるまで、永遠にここで待ち続けるつもりか?』
それ…は…。
ローの言葉に、なにも言い返せない。
だってさっき思ったばかりだ。
モモは自分を許さない限り、この島から決して出ない。
彼女が自分自身を許して、父に会いに行こうと決意するまで、コハクはずっと待とうと思っていた。
でも、本当にそんな日は訪れるのだろうか…。
それこそローが言うように、誰かが無理やり手を引かなければいけないのかもしれない。
だけど自分にはまだ、モモの手を引くだけの力がないってことは嫌でもわかる。
でも、ローになら…。
『俺が連れ出してやるよ…。お前と一緒にな。』
たった数日しか経っていないけど、ローの強さはよくわかった。
彼になら、外の世界に出ても、モモを守ることができるかもしれない。
目つきが悪くて、愛想のカケラもないけれど、強くて海賊で、すごい医者で…。
そして少しだけ優しいヤツだってことを、コハクは知っている。
彼になら、モモを任せてもいいのだろうか。
ひとつだけ、聞いてみた。
どうしてローは、そんなにもモモを連れ出すことに協力してくれるのか…と。
だってそうだろ。
母さんは正真正銘ベポの命の恩人だけど、オレはただ、母さんのもとへ案内しただけだ。
オレとの約束を破った詫びだなんて言うけど、そんなの言わなきゃバレないことじゃんか。
そう指摘すると、ローは決まり悪そうに顔をしかめた。