第37章 冒険の海へ
それから数時間後、まだ朝日も登らない頃、静かな島に賑やかさが戻ってきた。
「ただいまー!」
元気よく開く玄関の音に、モモは笑顔で振り向いた。
「おかえりなさい、みんな。」
コハクを連れて隣の島まで出掛けていた一味は、約束通りの時間に無事帰還した。
「モモ、キャプテン、ただいま!」
「ああ。変わったことはなかったか?」
「全然! むしろ楽しかったッス! コハクはいつでも海賊なれるな。」
ペンギンの言葉に、コハクは照れたように笑った。
「コハク、眠くはない?」
「眠くないよ。それより母さん! オレ、話したいことがいっぱいあるんだ!」
初めての冒険がよほど楽しかったのか、コハクは興奮気味にモモのもとへ駆け寄った。
「ちょうど良かった、わたしもコハクに話したいことがあるの。それじゃあ、ちょっと早いけど朝ごはんにしましょう。」
話はごはんを食べながら。
そう諭してモモは朝ごはんの準備を始めた。
「--…でさ、海底って変な魚がいっぱいいるんだよ。目が飛び出したヤツとか、平べったいヤツとか。気持ち悪いけど、食べたらウマいのかなぁ?」
興奮覚めやらぬコハクは、朝食の時間もずっと昨日の出来事を語り続けた。
「知らねぇのか、コハク。アイツら、ああ見えてけっこうイケるんだぜ。」
「え、食べたことあんのかよ、シャチ! すげーな、どんな味すんの?」
他のクルーたちとの距離も、なんだかグッと近くなっている。
ああ、本当にコハクを冒険に出させて良かった。
ありがとう、みんな。
コハクの世界は、今日大きく広がったことだろう。