第36章 心に灯る火
「……本気か?」
モモがローへ礼として求めた願いは、ローが想像していたどんなことよりも遥かに予想外なものだった。
「ええ、本気よ。…叶えてくれるかしら。」
彼女の願いを叶えることは容易い。
けれど「もちろんだ」と答えるには、いろんな問題が立ちはだかる。
「俺がいいと言ったところで、叶う願いとは思えねェな。」
むしろ不可能に近いのではないか。
「大丈夫よ。わたしがちゃんと責任もつから。」
「……。」
もし、そうだとしても、本当に自分はソレを叶えていいのだろうか。
「ロー、約束したでしょう。なんでも叶えてくれるって。」
確かにそう約束した。
けれど…。
「もし、ソレを叶えたとして…、その後 お前はどうするつもりだ。」
ローに尋ねられて、モモは数度瞬きをしたあと、しっかりとローを見据えた。
「どうもしないわ。ただここで、生きていくだけ。」
あなたたちの航海の無事を祈りながら、ずっとこの島で…。
強い決意を宿した金緑色の瞳。
その眼差しに、いくら説得したとしても答えを変えないことを理解した。
だから、ローは頷いた。
「…わかった、お前の願いを叶えよう。」
「ありがとう…。」
モモはとても幸せそうに微笑む。
ギュウ…。
胸が痛む。
違う、本当はこんな顔をさせたいんじゃない。
お前のその幸せは、偽りの幸せだ。
本当の幸せを、心からの笑顔を、俺が与えてやりたい。
どうしたらいい?
どうしたら、お前を救えるんだろう…。
心に灯った火が、いつまでも消えない。