第36章 心に灯る火
その頃、海賊船では…。
「…で、ここをこうすると潜水するんだぜ。」
「スッゲー! …なぁ、船を動かしてみちゃダメなのか? オレ、動く船に乗ってみたい。」
船の操縦を簡単に教えてもらったコハクは、ムクムクと膨らんでいく欲求を抑えきれず、輝く瞳でシャチを見上げた。
「うーん、それは船長に聞いてみねぇとなぁ…。」
さすがに船を勝手に動かすわけにはいかない。
「ああ、でも。戻ったら聞いてやるよ。船長がいいって言ったら、明日も教えてやるからさ。」
あからさまにガッカリとしていたコハクにそう言えば、たちまち表情が明るくなった。
「本当かよ、約束だぞ!」
ズイっと突き出された小さな小指に、シャチは「ああ!」と返事をして自分の小指を絡めた。
やっぱり似てるよなぁ…。
本人たちは否定するけど、コハクとローはよく似ている。
自分たちは一応だけど、ローの過去を知っている。
生まれはフレバンス。
かの町が、どんな最後を遂げたのかも…よく知っている。
ローはフレバンスの、唯一の生き残り。
だから、コハクとローに血の繋がりが無いということは間違いない。
ドフラミンゴを倒した このタイミングでベポが倒れ、たまたま薬草目的で寄ったこの島でコハクに出会う。
この事実に運命のようなものを感じずにはいられなかった。
まるで神様が、コハクとローを引き合わせたみたいな。
いや、それともモモとローを引き合わせたのだろうか。
女に興味を持てず、なにも魅力を感じられなかったローが、モモにだけは惹かれている。
それに気がついたのは、ペンギンの発言がきっかけ。
『モモ、俺と結婚して欲しいッス!』
誰が聞いても冗談だとわかる その一言に、ローは怒った。
一見、ペンギンが軽はずみに下船を匂わせたことについて怒っていたが、実際はそうじゃないことを、自分たちはわかっていた。
あれは、嫉妬だ。
ローはモモに、ヤキモチを妬いたのだ。
それから、ふとした瞬間に彼女を目で追っていることに気がついた。
間違いない。
船長は、モモに惹かれている。