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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第5章 あなたになら




(こうしてられない…!)

その場にローを寝かせ、キッチンへ踵を返した。


「あれ、モモ? …どうかしたのか?」

青ざめてただならぬ空気を発するモモに、シャチも異変を感じ取った。

(来て!)

自分じゃローを運べない。
キッチンにあった酢を引ったくってローの下へと駆けた。

「どうしたんだ…って、船長!」

看板に横たわるローの姿に、シャチも事態を察した。

「このキズ…クラゲに刺されたのか!」

モモは頷いて傷口に酢をドバドバかける。
クラゲに刺されたときの応急処置だ。

「オイ! みんな集まれ! 船長が大変だ!!」

声の出ないモモに変わってシャチがみんなを呼んでくれる。


「キャプテンがどうしたの!?」

「うわ、船長! どうしたんスか!?」

集まった2人も驚きに声を上げる。

(お願い、ローを医務室に運んで…!)

「わかった!」

ベポは軽々とローを持ち上げると、急いで医務室へ向かった。


ピンセットでクラゲの触手を抜き、モモは急いで毒素を取り除く薬を作った。

患部に塗りつけて様子を見る。

(熱が高い…。)

それに意識もない。

『刺されたら命はねェぞ。』

ローの言葉が頭を反芻する。

(イヤ…。そんなの、絶対。)

自分の身代わりに誰かが死ぬ。
そんなのはもう懲り懲りだ。

「モモ、あったぞ。このクラゲに間違いないスよね?」

ローの部屋から有毒危険生物の本を持って来たペンギンは、そのページをモモに見せる。

(間違いない。…でも--!)

そこに記された解毒薬はとても貴重なもので、この船にはない。

特殊な毒で、通常の解毒薬はほとんど効かないという。

次の島へはあと一週間以上かかる。

「ちくしょう、打つ手がないのかよ…!」


(わたしの、せい…。)


幼い頃、母と二人あの小舟での出来事がフラッシュバックする。

(わたしは、また…。)

涙が溢れ出す。
小刻みに震える手をベポが握った。

「モモ、大丈夫だよ。キャプテンは強いんだ、こんな毒に負けたりしないよ。」

ベポの言葉にシャチもペンギンも、そうだそうだ、と頷いた。

「出来ることをしようぜ?」


この船の仲間は、誰もモモを責めたりなどしない。
きっと、ローも含めて…。



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