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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第34章 起きて見る夢




夢かと思ったの。

だって、あなたと会えるときは、いつだって夢の中だったから…。



目の前に現れたあなたを見て、ああ、新聞の読み過ぎかなって思った。

あなたの手配書ばかり見ていたから、こんなふうに幻覚まで見るようになってしまったんだ。

(格好いいな…。)

ほら、見て、コハク。
あなたのお父さんは、やっぱり世界一格好いいでしょう?

幻覚の彼は、モモの記憶の人よりも少し逞しくなった。

帽子も変わってる。

夢だとわかっていても、彼から目が離せない。

他にも変わったところがないか探すのに忙しくて、瞬きすらできない。


ガラン…ッ。

手が震えて、力が上手く入らなくなった。

スルリと落としてしまったジョウロから水が飛び散り、モモのスカートを濡らす。


なんて幸せな…夢。


例え夢でも、あなたに会えた。

嬉しくて、胸が熱くて、こみ上げる涙を抑えることができない。

溢れ出した涙が、ツゥ…っと頬をつたう。

そうしたら、目の前の彼が目を見開いて、動揺したように身じろいだ。

そんなところまで再現できるなんて、今日の夢は出来がいい。

本当に愛しい人と再会できたような錯覚を引き起こし、さらにポロポロと涙を零してしまう。


「なぜ、泣く……?」

懐かしい声が耳に届いた。

何度も何度も恋い焦がれた声に、胸が震えた。

でも、それと同時に、あれ…? とした違和感を覚える。

夢の中のローは、いつだってモモの空想の中の人だから、こんなふうに困ったり、戸惑ったりしないのだ。

「なぜ泣くんだと聞いてる。」

再び投げかけられた問いに、モモの頭が徐々に冷静さを取り戻していく。


(……え?)



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