第32章 流れゆく時代
時は流れて…--。
「うわァ、ここが空島かぁ…! すごいね、キャプテン!」
「……ああ。」
雲海を進む船の上、ローはたいして感動した様子もなく答えた。
「…って、全然テンション上がってないじゃないッスか。空島ッスよ? ノースブルーの夢ッスよ!?」
我らが故郷の夢が、今ここに…!
だというのに、そのテンションはなんじゃ! と誰もがツッコミたい。
「フン…、思っていたよりたいしたことねェな。」
「ええッ! 未知なる島への冒険ですぜ? もうちょっと…こう、なんかあるっしょ!?」
空島へ行こうと決めたときのローとは大違いだ。
「そうだよ、キャプテン。あの時はあんなに楽しみにしてたじゃない。」
カプワ・ノームの酒場で楽しそうに空島を語っていたローはどこへいったのか。
「あの時は……。」
あの時は、どうしてあんなに空島が楽しみだったのだろう。
酒の酔いが回って、雰囲気に流されただけか。
でも、自分は確かに空島で見る なにかを楽しみにしていたはずだ。
「ホラ、空島には船長の知らない医療道具や薬草があるかもしれないッスよ。」
「……。」
そうか、それだったか。
自分が楽しみにしていたものは…。
「…そうだな、楽しみだ。じゃあ、俺は目的の島に着くまで部屋に籠もる。オマエら、あとは適当にやっとけよ。」
「ええええぇ!?」
ここへきて部屋に籠もるって。
それが楽しみにする人の態度!?
ローはやかましく騒ぐ仲間たちを無視し、さっさと自室へと足を向けた。
つまらねェ…。
もっと、なにか…あったはずなのにな。
キラキラと輝くような、なにかが…。