第31章 旅立ちの風
ビュオオォォ…。
強い向かい風が、モモの身体を打ちつける。
この風は、まるで自分のようだと思った。
前に進むのを怖がり、いつまでも彼らを引き止める。
ずっと、あなたと手を繋いでいたかった。
ねえ、でも。
そろそろ離さなくちゃいけないね。
あなたは海賊。
だから、この海を自由に駆けて。
そのためならわたし、悪女にでも嘘つきにでも…なんにでもなるから。
『だってあなた、言ったじゃない。わたし、覚えてるわ。』
あなたを恋しがって泣くのは、もう止めにしよう。
だって、わたしはなにも失ってないんだもの。
あなたの声も、愛も、思い出も。
全部、わたしの中にあるから。
『嘘くらいつけなくちゃ、生きていけないんだと…。』
あなたに教えてもらったこと、たくさんあるわ。
笑い方、泣き方、怒り方。
嘘のつき方。
そして、人の愛し方。
わたしを海の妖精から、人間に変えてくれたのは、ロー…あなたよ。