第31章 旅立ちの風
「……う。」
野原を駆ける風に頬を撫でられ、ローは目を覚ました。
「……?」
どうしてこんなところで眠っていたのだろうか。
確か…、そう。
ここは“緑の島 シルフガーデン”。
メルディアからエターナルポースを貰って、試しに来てみたのだ。
周囲を窺うと、すぐ近くにベポ・シャチ・ペンギンの3人もすやすやと眠っている。
「オイ、お前ら…起きろ。」
それぞれの頭を刀でつついた。
「イテテ…。あれ、船長…?」
「うーん…、ここどこだ?」
「ふあァ、シルフガーデンでしょ。ん、でもなんで寝てたんだっけ。」
3人とも目覚めはしたが、ローと同じく眠る前の記憶が曖昧なようだ。
「なんだっけ? そうだ、誰かが島の真ん中まで行きたいって言うから、ここまで来たんだよ。」
「そうだっけ…。で、気持ちよくて寝ちゃったのかな。」
「たぶん…そうッスね。」
そう言われれば、そんなような気がしてくる。
そうだそうだと頷き合った。
(本当にそうだったか…?)
クルー3人はともかくとして、自分までもがこんなところで能天気に昼寝などするだろうか。
自分の行動に首を傾げつつも、他に理由を考えるのも面倒くさかったので、止めにした。
「オイ、これ以上この島に用はねェ。船に戻るぞ。」
「「アイアイサー。」」
それにしても、草木ばかりのつまらない島だ。
いくらエターナルポースを貰ったとはいえ、こんな島に上陸せずとも良かったんだ。
「次は空島だ。さっさと情報を集めるぞ。」
すっかりシルフガーデンに興味をなくしたローたちは、足早に島を下りる。
野原に生えた、ひときわ大きな樹の影に、かつての“仲間”が身を隠しているとも知らずに…。